どの階級も、少なくとも3名は「チャンピオン」がいる現代ボクシング。
一体誰が一番強いのか?少し前まで、ボクシングファンはこの問に対する答えを、想像の中にしか求めることはできませんでした。
しかし、その問いに対してリアルな答えを提供するステージがもうすぐやってきます。
WBSS「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」、バンダム級で開催されるこのトーナメントには、WBA暫定王者のレイマート・ガバリョ以外全ての同級王者の参戦が決定!
そしてその内の一人には、WBA正規王者のモンスター・井上尚弥の名前もあります。
しかも断トツ優勝候補!
この頂点に立てば、バンダム級名実ともに最強は確実。誰にも文句は言えません。
今回は、このバンダム級WBSSトーナメントを少し詳しく見てきたいと思います。
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1.WBSSバンダム級トーナメント表が決定!
ファンの注目は、初戦の組み合わせ。既に発表されています。
この対戦トーナメント表の組み合わせの仕方も秀逸。
トーナメント参加の8名がロシアはモスクワに集まり、シードとなった4名が、順々に対戦したい相手を指名していくというものです。
それでは、WBSS参加の8名を簡単に見ていきます。
まず、WBAスーパー王者のライアン・バーネット。
ご存じWBA正規王者の井上尚哉。
IBFのエマニュエル・ロドリゲス
そしてWBO王者のゾラニ・テテ。
この4名がトーナメントに参加のバンダム級王者達です。
その他王者以外の4名も実力者揃い。
元WBA同級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノ
河野公平にRTD勝ちをしたジェイソン・モロニー
アマチュアで268勝12敗の好成績を残しているアマエリート、ミーシャ・アロイヤン
そして、元5階級制覇王者のノニト・ドネア。
以上の8名です。
シードになった王者4名が、現在非王者である4名を指名するかたちで対戦カードが決まります。
プロモーターの意向で対戦カードが決まるのではなく、選手の意向で決まるのもWBSSならではですね。
対戦カード決定からわくわくさせてくれます。
まず、第一シードのライアン・バーネット、ちなみにこのシードの順番は主催側が決めたそうです。
彼が選んだのは、元5階級制覇王者のノニト・ドネア。
日本のファンからしたら「獲られた!」というのが正直な感想でしょうか。皆さん見たかったのは、井上対ドネアの対戦のはず。
ドネアは日本でも人気のファイターですし、過去に西岡も倒しています。
現在下降気味であることは否めないものの、元5階級制覇王者なので実績は最高クラス。
井上対ドネア見たかったですが、仕方ないですね。
次に選択権を与えられたのが、第二シードの井上。
彼が選択したのは、ファン・カルロス・パヤノ。
ドミニカ共和国出身の選手で、元WBAスーパー王者。
現在ライアン・バーネットが持っているスーパー王者のベルトは、過去にパヤノがアンセルモ・モレノから奪取したものになります。
第三シードのゾラニ・テテはミーシャ・アロイヤンを指名、最後にIBF王者のエマニュエル・ロドリゲスは、指名試合としてIBF同級3位のジェイソン・モロニーと戦う事が事前にきまっていたそうです。
ロシア・モスクワで決まった対戦カードは以上の通り。図も参考にしてください。
まさに頂上にたどり着いたものは、WBA、WBO、IBFのチャンピオンベルト、つまり3団体統一王者としてバンダムに君臨することになります。
WBCは現在空位のため参加者なし。
それでは、各試合の予想をつけていきたいと思います。
各試合の予想1-ライアン・バーネット対ノニト・ドネア-
正直この試合が一番予想しにくい。
バーネットはWBAスーパー王者として、他の王者よりもランク的には上にいるように見えますが、数度の防衛を繰り返してスーパー王者になったわけではなく、スーパー王者であるザナト・ザキヤノフに勝って移動したタイトルです。
正直通常の王者と変わりません。
バーネットとドネアのスタイルですが、どちらも待ちのボクシング。カウンターパンチャーです。
一発入ったと分かれば、一気に攻めたてるのがスタイルです。
バーネットの特徴としては、目がいいこと。
調子にのってくると、両手をだらりとさげて、相手を挑発するように、ヘッドスリップで攻撃をかわし、カウンターにつなげます。
ザキヤノフ戦では、いきなりジャブをもらっていたので、目がいいというのは違うのかと思いましたが、試合の中で段々慣れてくるようです。
他にも、相手をコーナーに誘い込んで、何発か打ってクリンチを繰り返す選手。なので、人気としてはイマイチ感がいなめません。
現在までのバーネットの戦績は19戦19勝9KOと、そこまでKO率は高くないのが現実です。
しかし、試合を見ると捨てパンチがほとんどなく、1発1発が強烈です。その分手数は少ないですけどね。
捨てパンチがないと、世界王者クラスだと中々仕留められないでしょう。
ヘビー等重量級になってくると話は別ですが、バンダムであればあつ程度の捨てパンチ(効かせたいパンチへのつなぎのパンチ)は必要になってきます。
対するドネアも、そこまで手数は多くありません。
最近特に顕著になってきましたが、ヘッドスリップからのカウンターに頼りすぎるあまり、手が出なくなっていく傾向にあります。
そして、最新の試合ではドネアはフェザーで戦っていることもあり、スピードは体重増加のため目減りし、パワーは相対的に鈍っている感があります。
バンダムはフェザーの2階級下。ここに下げることにより、ドネアのパフォーマンスが向上するのであれば、この試合はドネアの方に分があると思います。
というか、ドネアに勝ってもらって井上との勝負が見たいと言うのが正直なところ。ドネアが一番いい動きをしていたのがバンダム時代です。
ドネアの紹介VTRでよく流される、対フェルナンド・モンティエル戦の左フック一閃のダウンは、バンダム時代です。
しかし、いくら全盛期のバンダムに戻すからと言って、その当時の動きに戻れるかといえば、そうではないでしょう。近づけることはあるかもしれませんが、既に7年前の話です。
リアルに考えるならば、バーネットの勝ちだと思います。
最大の理由は、ドネアが直近で戦っているカール・フランプトン。
フランプトンのスタイルはバーネットに酷似しています。2人は同門ですし、バーネット自身もフランプトンの事を尊敬していると言っています。
その選手に対して、ドネアは3ジャッジともに117-110の大差で負けました。バーネットとドネア、ともにスピードとカウンターが売りの選手ですが、今であればバーネットが上回るでしょう。
よってこの試合、バーネットの勝ちを予想します。
しかし、ドネアが勝った方がトーナメント的には断然面白い!現実的な予想はバーネットですが、希望でドネア。
おそらく多くの方がそう思っているのではないでしょうか?
各試合の予想2-井上尚哉対ファン・カルロス・パヤノ-
この試合に関しては別の記事に既に書かせていただいたので、幾多の説明は不要かと思いますが、井上の勝ち。これで決まりです。
敢えて懸念すべき点を挙げていきたいと思いますが、まずはパヤノのダーティファイト。
彼は本当にアマチュア出身かというくらい、ラフに来ます。
ジャブを打ってから接近し、強引な左右フックお打ってくる。見た目豪快で効きそうなのですが、テレフォンなので、そこまで効かないのか今までの戦績は21戦20勝9KO1敗。
次に、スピード感のある試合が出来るという事。井上選手のこれまでの試合の中で、両者ともにスピード感のある試合というのは見受けられません。ただ単に井上選手が飛びぬけて速いというのが一番の理由ですが。。
パヤノ対ルーシー・ウォーレン戦のようなラフ&スピーディな試合は危険が伴います。1発がありますからね。
他の王者数名が指摘しているとおり、井上は攻撃時若干ガードが甘くなる事があります。本当に若干で、その弱点を誰もつけていないじゃないか、といえばそれまでなのですが。。
ラフ&スピーディな試合であれば、そこをつかれる可能性もなきにしもあらず。気を付けるとすればそれだけですかね。
井上選手は天井が見えない実力なので、井上勝利の予想しか出来ないです。
しかも、対バーネット戦では身長差というハンデもありません。
前回のマクドネル戦では、身長差が心配されましたが、それも一蹴。結果は知っての通りです。同じバンダムで、身長差のない相手。サウスポーですが、特に苦手意識はないでしょう。スーパーフライ時代のナルバエス戦を見れば分かります。
この試合に関しては、井上が勝つかどうかよりも、どう勝つかの方に注目した方がよいでしょう。
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各試合の予想3-エマニュエル・ロドリゲス対ジェイソン・モロニー
残り2試合に関しては、日本人には若干馴染みのない対戦です。まずロドリゲス対モロニー。ジェイソン・モロニーはまだ紹介したことがないので、少し説明させていただきます。
現在までのプロ戦績は17戦17勝14KOのパーフェクトで、KO率も高いですね。
最近目立っているオーストラリアのボクサーです。
ジェフ・ホーンの試合からオーストラリア人ボクサーは何か起こしてくれるんじゃないかと思ってしまいます。
現在正規の4団体では王者経験はありませんが、WBC傘下のCBC(Commonwealth Boxing Council)のタイトルと、WBAのオセアニアタイトルを持っています。
またアマチュア時代には、イギリス連邦に属する国や地域が参加して行われるスポーツ競技大会であるコモンウェルズゲームにフライ級で出場。優勝とはなりませんでしたが、アイルランドで最も成功したアマチュアボクサーであると言われるマイケル・コンランに勝利をしています。
プロデビューは2014年。そこまで目立った対戦相手との試合はありませんが、直近の17戦目で河野公平と戦っています。
結果は6ラウンド目で河野の棄権となりました。
ロドリゲスとモロニーですが、共にオーソドックスで基本に忠実。教科書といえるようなボクシングをします。
2人ともに共通の敵などがいないので予想は厳しいですが、バランス、左の多彩さ、パワーで上回るロドリゲスを推します。
モロニーは、パンチが若干ラビット気味で、あまり威力がなさそうな印象を受けますね。河野をジャブでダウンさせている事から見ても、パンチを出すタイミングなどはいいのでしょうが、力はなさそうです。今までの14KOは、対戦相手との実力差からくるものだと思われます。
ロドリゲスとモロニーは噛みあうでしょうね。序盤は左の差し合い、そして徐々にロドリゲスがパワーで押しだしてくるんじゃないかと予想します。
確率としては、ロドリゲス判定勝ち、ロドリゲスKO勝ち、モンロー判定勝、モンローKO勝ちの準でしょうか。
各試合の予想4-ゾラニ・テテ対ミーシャ・アロイヤン-
アマ実績ナンバー1は、ゾラニ・テテの相手であるミーシャ・アロイヤンです。
テテの方も、400戦以上アマ戦歴がある見たいですが、目立った大会への出場、そして優勝経験などは見受けられません。
五輪出場経験お持つのはアロイヤンだけ、ロンドン五輪の銅メダリストです。2011年と2013年の世界選手権も金メダルを獲得。
プロ戦績は4戦だけですが、アマ時代現在大物になっているボクサーとの対戦もあり、勝っています。カリッド・ヤファイ、ルーシー・ウォーレンなど。
プロ4試合ですが、全てが地域のタイトルマッチです。3戦目からバンダムになっていますね。2戦目まではスーパーフライでした。
初戦でWBA東アジア、2戦目でWBCスーパーフライのシルバー王者、3戦目で空位になっていたWBAのインターナショナル王者、4戦目はその防衛戦という流れです。
正直どのタイトルも実力のほどがよくわからないタイトルですので、試合動画を見てみました。基本はサウスポーで、スイッチが出来ます。
左に構えている時思ったのが、「ハメドに似てる」です。
ハメド程ではありませんが、若干トリッキーな動きをします。パヤノと同様、アマらしからぬ動きですね。見た目も少し似てますし。
はっきり言って実力は未知数。よく分かりませんが、テテが苦しみそうな印象があります。左右どちらも構えられますし、接近戦で体お入れ替えてからの攻撃もスムーズ、4戦でKOはまだありませんが、パワー不足という欠点を補えるスピードがあります。
特に左構えになったときのスピードは一級品。出場選手の中では井上と1.2を争うんじゃないでしょうか。テテとの対戦で注目すべき点は、身長のないアロイヤンが、いかにテテの懐に潜り込むかという点。
テテの長い手から繰り出されるジャブと、高速のワンツー・ボディ、そして危険度マックスの左アッパーをかいくぐれるかがキーポイントですね。
しかし、この試合を予想するのであれば、テテに軍配をあげたいです。
身長の利はやはりでかいのではないかと思いますね。かなりやりづらいはずです。
プロ5戦目でのテテは中々厳しいでしょう。テテにワンツー・ボディか左アッパーで格好よく決めてほしいと思います。
WBSSバンダム級の日程
結局はチャンピオンがすべて勝ちあがるという予想になってしまいましたが、「やはりチャンピオンは凄い」というところを見せつけてほしいですね。
では、このバンダム級トーナメント、いつ見れるのかという事を書いていきます。
8月4日時点で、バンダム級トーナメントの開催日程は主催側から発表はされていません。
なので、前回のクルーザー・ミドルの日程になぞらえていきたいと思います。
まず、初戦は9月から10月にかけて全4試合、準決勝は2019年初旬、ファイナルを2019年の7-9月にかけてですね。
しかし、選手の怪我などの状況にもよりますから、おそらくずれ込むと思います。現に、スーパーミドルのトーナメントはまだ終わっていません。
怪我などが付きもののスポーツですから、こればかりは仕方ないですね。延期につぐ延期で、熱が冷めるという事だけはなくしてもらいたいです。
WBSSで井上尚弥は優勝できるか?
日本国内だけではなく、世界から見ても、井上は断トツの優勝候補です。
下の階級から上がってきたことで、パワーが目減りするのではないかという識者もいましたが、マクドネル戦を見て何も言えなくなったでしょう。
身長差、スピードに関しても同様です。
上述の通り、完全な状態の井上選手の実力が天井知らずなので、優勝予想しか出来ないんですよね。誰かに負けるという姿が想像できません。
一つだけ怖いのは、井上の怪我。過去手を痛めて以来、だいぶ気を付けているようですが、初戦の対パヤノとのラフファイトでどこか痛めるのが怖いです。
初戦と準決の間の期間が短いので、初戦で痛めて準決でそれを理由に判定負け。みたいな事がありえそうで心配です。
怪我さえなければ、井上の敵はいないような気がします。
ライアン・バーネットの打たれ強さ、目の良さ、身体のスピード、テテの体格、ロドリゲスの鋭さ、ドネアの経験などなど、それぞれの選手が個別の能力では井上より上回るところがあるかもしれませんが、総合の力でいけば断然井上が上。
優勝できるか?という問いに関しては、「出来る」という答えしかできません。
「こうすれば出来る」「あぁなれば出来る」といった条件付ではなく、「普通に出来ます!」でいいでしょう。
その答えが正しいかどうかは、来年の今頃です。長丁場になりますが、モンスターがWBSSで暴れる姿を楽しみに待ちましょう!
まとめ
以上、WBSSの試合の予想と、日程、井上尚哉がどこまでいけるかに関して書かせていただきました。
バンダムの実力者8名が出場する今回のトーナメント。PFPランカーの井上の参加、しかも断然優勝候補という事で、「井上のためのトーナメント」といっても過言ではないでしょう。
チャンピオンにはそれぞれ勝ちあがってもらい、優勝者の価値を上げてほしいですね。そして気になるのは、このトーナメント後の井上尚哉の動向。
バンダムにとどまるのか、それともスーパーバンダムへの移行か。少し気が早すぎですが、それも楽しみに待っておきましょう!
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