昨年中国でのビッグアップセットを成し遂げてから、注目度が格段に上がった木村翔。
その後アテネ五輪代表の五十嵐、強打が売りのフローイラン・サルダール相手に防衛ロードを突き進んでいます。
ゾウ・シミンには勝っても、木村が防衛に2度も成功すると予想した人は多くないはずです。
エリート狩りはいつまで続くのか?
もし次の相手に勝てれば、本当に長期政権も夢ではない?
次戦木村翔を待ち受けるのは、中京の怪物・田中恒成です。
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エリート対雑草の分かりやすい図式
木村翔が中国へ向かい、ゾウ・シミンを倒したのは、2017年の話。
そのアップセット、木村の人柄が相まって、中国では超が付くのほどの人気者。
卓球の愛ちゃんに次ぐ、中国で最も有名な日本人アスリートになっています。
昨今、井上、村田などアマチュアで相当な実績を残した選手が活躍しているプロボクシング界ですが、木村はまさにたたき上げ。
中学3年生でボクシングを始め、高校では所謂「ワル」に。
24歳で再スタートしてから、プロにはなったものの、デビュー戦でいきなりKO負け。
全日本新人王も、日本王者も、東洋太平洋王者も獲った事のない選手です。
その選手が敵地中国で、しかも五輪2連覇の王者を仕留めるのですから、分からないものです。
木村が決してエリートではないという事は、数多くのメディアでも語られていますし、多くのボクシングファンが知るところとなっているでしょう。
それ故に、今度の試合は楽しみなのです。
半官贔屓ですから、ほとんどの人間が木村に勝ってほしいと思うはず、現に私もそうです。
相手は、ゾウ、五十嵐に匹敵するアマエリートで、プロでの実績はこの2人よりも数段上。
中京の怪物、田中恒成選手はどんな選手か、見ていきます。
中京の怪物–田中恒成
ミニマムとライトフライを制覇した2階級制覇王者であり、戦績は11戦11勝7KO無敗。
ミニマムとライトフライが主戦場だった割には高いKO率です。
高校時代にはインターハイ制覇、国体2連覇、選抜も優勝した、高校4冠の選手でした。
現在は階級をフライ級に移し、その王者の座を狙います。現在はフライ級でノンタイトルを1戦のみ。
テレビ放映もなかった1戦ですので、細かい所は分かりませんが、階級を上げたときによくある、スピードの衰えとパワーの相対的な目減りはなさそうです。
相手は若くて無敗のWBOフライ級13位ロニー・バルドナドでしたが、9回2分26秒TKO勝ち。
ライトフライでの前戦ではダウンも喫し、両目眼窩底骨折も負ってしまいましたが、影響なしと見てよいでしょう。
自分の適性体重に近づいて行っているといった感じです。
ミニマム、ライトフライ時代から良かったですが、対バルドナド戦は左ボディが効果抜群、さらにパワーアップしているようです。
田中選手の唯一の心配点はディフェンス。
アンヘル・アコスタ戦2から3ラウンド目で顎に綺麗にもらった右、そしてパランポン・CPフレッシュマート戦で喫したダウン。
得意な左ボディを打開策にして、そこまでのピンチには陥りませんでしたが、フライ級でくらってしまえば危ないかもしれないですね。
とはいっても、ブロック、ダック、ロール、ステップはしっかりしていたようで、フライに上げてからのディフェンスには更に意識が向いていると思います。
ピンチに陥っても、そこから挽回できる経験をしているのが良い所ですね
オフェンス面ですが、田中選手の一番の武器はハンドスピード。
左ジャブからのボディは流れるようです。
フライ級でやはり相手の耐久性は相対的に上がっているようで、4ラウンド左ボディのクリーンヒットでダウンを奪いましたが、そこから長引き結局は9ラウンドTKO。
「タイミングを逃した」という田中選手の弁でしたが、これまで倒せていたシーンで倒せなくなっているという事を感じたのだと思います。
単純な言い方ですが、この田中恒成は強いです。
パワーよりもハンドスピードで相手を圧倒しKO率は60%以上、ディフェンスもフライの試合を見る限りは心配もなく、さらにピンチに陥ってからのリカバリーの経験もある。
さらに、前回ダウンを奪われた不細工な試合をしてしまいましたが、フライ復帰1戦目でのパフォーマンスは及第点。
自信も取り戻したと思います。
穴がない、というのは大袈裟かもしれませんが、負ける要素が見つかりません。
しかし、そういう相手に勝ってきているのが、木村翔です。
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木村・田中、それぞれの次戦への取り組み
木村は恒例となったタイ合宿。
ゾウ・シミン戦の前から行っているようで、世界戦の前の願掛けのような意味合いもあるのでしょう。
とは言っても内容は過酷。
1ラウンド4分のスパーリングを2週間で72ラウンド以上こなすそうです。
ゾウ戦、五十嵐戦で見せた無尽蔵のスタミナを、さらに強化する事が目的です。
スタミナがあることによって、常に前へ出続ける事が出来、さらにガードが下がらないのが木村の一番の特徴です。
田中は対木村を想定したスパーリングパートナーを招集。
なんとパートナーは前戦の相手だったバルドナド。
数試合前の相手をスパーのパートナーに指名するのはよくある事ですが、直近の試合の相手を持ってくることは中々ないですね。
私は初めて聞きました。
パンチを大振りに打ち込む、手数が多い、前に出てくるという木村の武器を持っている選手のようです。
スピード&クイックネス対無尽蔵のスタミナ&手数、かなり分かりやすい図式ですね。
両者にとってメリットも小さくありません。
木村は田中に勝てば、知名度だけではなく、「本当に強いんだ」と改めて日本のボクシングファンに認識させることが出来ます。
田中以上に強いボクサーは軽量級では中々いないですから、これを倒したら評価は更にうなぎ上り。
当初は誰も予想していないであろう長期政権も可能です。
田中にとっては知名度の獲得です。
実力のわりに、田中は知名度がない。
地方の会場で多く試合をしているのと、正確無比な感じが「面白くない」という印象を植え付けてしまっているのかもしれません。
その点木村は雑草ファイターで荒々しく、序盤は被弾をするものの、あきらめず前へ出続け最終的には勝ってしまう。
どちらを応援するかと言ったら木村ですね。
木村対田中、どちらが勝つか?
おそらく多くのボクシングファンこう思っているはずです。
「セオリーでいけば十中八九田中。でも木村に勝ってほしい」
木村は、田中が今まで戦ってきた中で一番耐久力があると思います。
そして手数と根性も。
木村にとっては、田中以上のスピードとクイックネスを持った選手との戦いはなく、こちらも未知との遭遇。
序盤はやはり田中がリングジェネラルシップを握るでしょう。
木村が技術で翻弄するというシーンは、こういっては失礼ですが、万に一つもないはずです。
中盤から終盤にかけて、木村の打撃がヒットし始めれば、いつもの「木村タイム」のスタートです。
田中は一度入ると防戦一方になる癖があるので、そこで一切手を緩めず、押し切れれば判定勝利のゴールも見えてくるのではないでしょうか。
正直、今回木村勝利の確率は薄いと思います。
田中のフライ転向1戦目のパフォーマンスは素晴らしいものがありました。
減量のストレスから解放され、スピードはさらにアップし、よりディフェンスにも意識が向くようになっています。
木村対ゾウクラスのビッグアップセットを日本国内で起こせるか、個人的には木村の終盤での根性ラッシュTKO勝ちを見せてもらいたいです。
まとめ
久しぶりに、面白い図式の日本人同士の試合です。
雑草対エリート、根性対コンピュータといったところでしょうか。
私を含め、多くは田中勝利の予想だと思います。
しかし、何が起こるか分からないのがボクシング。
それを体現して見せてくるのが、木村翔というボクサーです。
田中対木村、要チェックです!
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