ラスベガスに散る、村田諒大の試合を考察

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日本人にミドル級の壁は厚すぎる。竹原慎二以来、今後50年はミドル級での世界王者は出てこないとまで言われました。それだけミドル級の層は厚く、欧米人が跋扈する、日本人は手の出ない階級でした。

 

しかし、その言説に風穴を開けてくれたのが村田諒大。オリンピックで金メダルを獲得し、さらには世界王者に。この時点で日本人初の偉業です。

 

竹原が出来なかったミドル級の初防衛も果たします。そして、V2をめざしラスベガスに乗り込み、ロブ・ブラントと拳を交えました。

 

結果は大差の判定負け。10月20日に行われた、この試合に関して考察をしていこうと思います。

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消化試合の様相を呈した試合前

10月20日、村田の対戦相手となったロブ・ブラントは、WBAミドルの2位。

トップコンテンダーでKO率67%ではあるものの、目立った選手との勝利経験もなく、特段目立ったところのない選手でした。

 

対する村田の方が、アウェイにも関わらず戦前評価は高かったですね。村田の動向はアメリカでも注目が集まっており、横浜アリーナで行われた初防衛戦はESPNでも早朝ながら生放送されました。

 

消化試合とされた最もの理由は、この試合をクリアした後に描かれていた壮大な青写真。ゲンナディ・ゴロフキン、もしくはサウル・アルバレスとの対戦です。

 

言ってしまえば、「世界前哨戦」。

 

ラスベガス開催となった村田対ブラント戦は、この試合に繋げるための、世界王者としての村田をアメリカ市場に見せつけるための試合だったと言ってもいいでしょう。

 

ミドル級戦線に村田あり!をアメリカボクシングファンに植え付けられれば大成功。

 

珍しく村田も言っていた通り、KOが必要とされる試合でした。

 

しかしながら、試合前から村田側の思惑とは外れるようなことが起こります。

 

ゲンナディ・ゴロフキンの王座陥落。丁度同じように以前、井上尚弥がロマゴン戦を目指していた矢先、シーサケット相手にロマゴンが敗れます。

 

あくまでも第三者の敗戦の一つですが、最強の相手と戦い勝利するというのは、ボクサーにとって最大のモチベーションになります。

 

村田は、これを失ったと思います。対アルバレス戦もありますが、アメリカ市場でゴロフキンの何倍も市場価値のあるアルバレスとの対戦交渉は難を極めるでしょう。

 

アルバレスと対戦したい人気選手は山のようにいます。

 

「今夜、ゴロフキンが勝てば、村田と来春に東京ドームで対戦する話を進めることになる。(アメリカの)土曜の夜に合わせ、日本時間で日曜の朝の開催だ。ゴロフキンは東京に行くことを望んでいるんだ」

村田をプロモートするトップランクのボブ・アラム氏はこう述べていました。

 

手に届く所にはあった。しかし、一旦白紙。もちろん村田対ゴロフキンが完全になくなったというわけではありませんが、「最強に挑む」という図式はなくなったという事になります。

 

対して、かませ犬とまで言われていたロブ・ブラントに関しては、モチベーションは変わりません。

 

村田にとっては勝って当たり前の試合である、しかし、そういう試合が一番難しい。まさにそれが出た1戦でしたね。

 

村田対ブラント考察

 

前日計量で村田は72.2kg、ブラントは71.8kg。2人ともアンダーでクリアします。

 

共に減量苦はなさそうな表情。村田には既にこの試合が終わった後の事を聞く記者もいました。ブラントはそれにムカついたみたいですね。アルバレスと対戦したいかどうかの質問に関しては、「Without Mexican beef」つまり、メキシコ肉食べないならやってもいい、というジャパニーズジョーク。しかし、今考えると若干恥ずかしい発言です。。

 

では、試合を見ていきましょう。

 

1ラウンドは予想通りと言えば予想通りの立ち上がり。ブラントが15発ジャブを中心に打って初めて村田の1発目が出ます。

相変わらず手数が少ない。。攻撃は最大の防御ならぬ、防御は最大の攻撃であると言わんばかりの村田のスタイル。

 

高めのガードで前進し、相手にプレッシャーをかけ、重い1発で相手を崩し仕留めるのが村田です。今までそれで勝利してきました。

 

一度パンチ力でびびらせれば村田ペースなのですが、今回それを手数とボディワークで崩されましたね。

 

1ラウンド、既に村田の顔が腫れるくらい被弾を許します。パワーは体の厚さを見る限り村田でしょうが、スピードと手数は明らかにブラント。

 

1ラウンド、2ラウンド、なぜこうも村田の手が出ないのかと思うくらいの消極性です。

 

ブラントはジャブが実に出ます。ガードの上でも印象は非常に良い。2ラウンド終了後、現地の実況も言っていましたが、ブラントは明らかなハイペース。

 

このペースが落ちたときに、村田のつけいるチャンスがる。しかし、試合は予想外の展開を見せていきます。

 

3ラウンド目、相変わらずブラントのジャブは的確。村田はパンチと言うよりも、プッシングのシーンが目立ちます。ブラントの方が攻めて攻めて攻めまくるという、古き良き日本人的なスタイルを思い起こさせてくれますね。

 

なんかこの時点でブラントを応援したくなってきました。村田は試合中ニヤニヤしてるし。。(試合前もニヤニヤしてました)

 

ステップワーク、ヘッドスリップ、連打で打てる高速ジャブ。4ラウンド目から「やばいんじゃないの。。」と思いながら見てた人も多いでしょう。

 

世界初挑戦だったエンダム戦も手数は少ないながら、ワンパンで倒しています。しかし、この試合に関しては、それが生まれなそうな雰囲気ではありません。

 

被弾があまりに多すぎる。そしてジャブすらもよけられる。ペースは完全にブラントですね。

 

ハイペースでも、それが自分主導のペースならば、疲労はそこまで溜まりません。5ラウンド目で、ブラントは勝利を確信したと試合後に語っています。

この試合、村田の見せ場は5ラウンドでした。1から4ラウンドは、どう贔屓目に見てもブラントですが、5ラウンド目は村田に10-9で付けてもいいでしょう。

 

しかし、ここを乗り切ったブラントは、この時点で勝利を確信したと試合後に言っています。村田のパンチをもろにくらっても、自身のペースを乱すことがなかったからでしょう。

 

村田は更にあせったと思います。6ラウンド目からは、また元通り。逆にブラントのペースでやらされている村田の方に疲労が目立ちます。

 

顔は今まで見たことがないくらい腫れあがり、ブラントは綺麗なまま。

 

7ラウンドに入ってもブラント落ちないですね。打つ時に声を出し始めたので、スタミナが切れ始めた証拠なのですが、手数は変わりません。村田は露骨に苦しそう。。

 

ブラントのジャブの多さは日本の4回戦ボクサーみたいです。ワンツー・ジャブを多用していました。スピードもあるので、村田は反撃したくともリズムをつかめない感じです。

 

9ラウンドに入る前、日本だとあまり耳にすることの出来ないインターバル中の田中繊大トレーナーと村田の会話が聞こえてきます。

 

まず、「大丈夫か?」と田中。この時点で、あぁやっぱりやばいんだなと思いました。村田は「大丈夫だけど、動きが悪い」と答えます。

 

確かに悪い。。9ラウンド目に、村田の顔がブラントのパンチでモロに上を向きます。これは今までの村田のキャリアでは見られないことです。

 

10ラウンドに入り、5ラウンドまでのパンチ数と的中率のデータが出てきました。ブラントは村田の2倍以上の574発打っています。その内的中は161発で的中率28%。

 

良い当て勘とはいえませんが、絶対的な数字では残りのラウンドで村田が勝つことは無理でしょう。つまり、この時点で村田が勝つにはKOしかないという明らかな事実です。多分勝ってるのは5ラウンド目くらいですし。。

 

11ラウンド開始前、ブランドのセコンドは「Two more Round, You are World Champion!」。日本人でも異論はありません。まさにその通り。

 

指示は、サークリングをしながらジャブを打つこと。1ラウンド目から変わりません。

 

10ラウンドまでブラントが打ったパンチ数は1058発。1ラウンド100発、しかも世界戦でそれをするのはかなりの体力。スタミナお化けといってもいいでしょう。両者の手数の開きは5ラウンドまでよりも縮小しましたが、的中数はさらに開きました。

 

これはつまり、村田の的中率が下がっているという事です。空振りというのは、かなり疲れます。たとえばの話ですが、20発ガードの上であれ相手に当たるのと、10発打ちすべて空を切るのでは、後者の方が断然疲れます。精神的にもきますしね。

 

ブラントはいずれ失速するという声はどこえやら、です。11ラウンドでもガードの下がらないブラント、凄いですね。

 

対ゾウ・シミン戦の木村翔を思い出します。

 

12ラウンド目、手数は拮抗していた感じですが、顔の位置がずれるような被弾は村田の方が多かったです。

 

明らかにブラントの判定勝利。ジミーレノン・ジュニアから発表されたスコアは、118-110が一人、119-109が2人でブラント。

 

日本の解説者の中には、村田の負けでも納得できるが、そこまで点差は開いていないという意見が多かったようです。なので改めて見てみました。

 

どこをどう見ても、明らかに開いています。。村田の完敗ですね。

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村田はなぜ負けたか?ブラントはなぜ勝ったか?

 

村田がなぜ負けたのかを考えるには、まずはなぜブラントが勝ったのかを考えるのがよいでしょう。

 

それほど、ブラントの村田対策はどんぴしゃでした。

 

サークリングを続けながら、トリプルのジャブを2回。常に同じ位置にはいない。そして、スマートに。セコンドもインターバル中にこれを繰り返しブラントに言っています。

 

そしてなんといってもブラントのスタミナ。総パンチ数は1,262発。1ラウンド平均100発以上は、底知れぬスタミナがなせる業です。しかも村田のプレッシャーをさばきながら、です。パンチの総数には、ブラント自身も驚いていました。

 

ブラントはこの試合のために、エロール・スペンス・ジュニアとスパーリングを繰り返しました。クラス、スタイル共に村田と違いますが、世界王者とスパーをするというのは、初挑戦に向けてかなりの準備になるのでしょう。

 

自分には「疲れる」という選択肢などない、という心構えで村田戦に臨んだと言うブラント。

 

さらに、試合前から村田対ゴロフキンの事をちらつかせられ、自分は重要視されていないと怒りに燃えたブラント。

 

対する村田は勝って当たり前の試合。いわゆる「世界前哨戦」。この試合に向けてのモチベーション、準備に関しては、明らかにブラントが勝つ材料がそろっています。

 

さらにもう一つ、これは村田が負けた理由ですが、村田は自分のパンチに自信を持ちすぎだと思います。

 

村田程のレベルにいる選手がなぜああも手数が少ないか。それは、自分のパンチに自信があり、いつでも相手を崩せると思っているからです。

 

現に今まではそうでした。手を出さないプレッシャーと言う攻撃で相手を後退させ、ワンツーで仕留める。

 

しかし、今回は単発では通用しない相手だったということです。また、ワン・ツー系以外のコンビネーションが少なすぎます。左フック、ボディも所々見せてくれますが、なにかバランスが悪いように思えます。うまく踏み込めていないような感じですね。

 

ワン・ツーとは最も基本で最も重要なコンビネーションです。それを究極にまで極めたのがパッキャオだと思うのですが、村田にはもう少し多彩さが必要です。

 

今後に関して村田は何も言明してはいませんが、引退の可能性だってあるでしょう。DAZN、フジテレビ、電通、トップランクなどなど協力先との関係もあるでしょうが、最終的にはボクサーとしてどうしたいか、です。

 

まとめ

今回の試合は、まさにブラントの作戦勝ちでした。話し方などを見ても、ボクシングスタイルを見ても、非常に頭の良い人なんだろうなという印象を受けます。

 

村田は、ブラント陣営が考えた戦略を、リング上で再現させてしまい、それにはまってしまいましたね。

 

再戦も計画されてはいるようです。しかし、この試合内容では、村田に勝ち目があるとは思えません。

 

それにしても、やはりミドルは層が厚い。このブラントだって無名でしたが、村田とはかなりの差があったと言っていいでしょう。

 

ここから村田対ゴロフキンという事があるのか?まずは村田の進退が知りたいですね。

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