テテの「Congratulations. I can’t wait for us to fight! See you soon for TeteTime」。
これに対し井上は「Thank you! I can’t wait too!」
これは、井上対マクドネル戦のあと、ゾラニ・テテから井上に送られたツイッターのメッセージ。
WBSSに向けて、両者ともに完全に臨戦態勢。
「早くやってバンダム最強を決めようぜ」
というバチバチのやり取りです。
このようなやり取りはSNS時代のメリットですね。
では今回は、バンダム級で不気味な存在感を放つゾラニ・テテの戦績、そして井上尚哉と比べてどちらが強いのか見ていきたいと思います。
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1.南アフリカ共和国出身のアマ・エリート
南アフリカ共和国という国からは、中々ボクシングのイメージが湧かないかもしれませんが、多くの名ボクサーを排出しています。
国際ボクシング名誉の殿堂博物館で殿堂入りを果たしたブライアン・ミッチェルを皮切りに、メイウェザーから幻のダウンを奪ったフィリップ・ヌドゥ、IBFバンダム級王者を13度防衛したブヤニ・ブング、同じくIBFのスーパーバンダムを6度防衛したウェルカム・ニシタ、そして先日田口良一に判定勝ちし、WBAスーパー、IBFの統一王者になったヘッキー・ブドラーなどがいます。
他にも、K-1で活躍したヴァージル・カラコダ、フランソワ・ポタ、マイク・ベルナルドなど有名どころを多く輩出。
そして彼ら以上に、今後注目を集めるであろう現WBOバンダム級チャンピオンのゾラニ・テテ。
アマチュアのキャリアは400戦以上あり、負けは3敗のみ。
アマでの受賞歴や優勝歴が確認出来ないところが不気味なところです。現在のファイトスタイルを見ると、伊達に400戦以上していないことが分かります。
完成されたサウスポースタイルといえるでしょう。
どことなく、ギジェルモ・リゴンドーと被ります。
これは余談になるかもしれませんが、今後アフリカ大陸のボクサーが市場を席捲する可能性が高いです。現在、ゾラニ・テテ、ヘッキー・ブドラー、そしてへスス・マグダレノ相手にアップセットを起こしたガーナ出身のアイザック・ドグボエ。
アフリカの多くの国では学校でボクシングを教えるらしいです。スポーツというよりも、護身という意味合いが強いのでしょう。
YOUTUBEでアフリカの子供同士の路上ボクシングを見たことがあります。はっきり言って、日本の6回戦であれば,やられるレベル。かなり高いです。
今はYOUTUBE等動画サイトで色々なボクサーが見れるので、彼らもそれを見て吸収しているのでしょう。一人は確かL字ガードをしていました。もちろんメイウェザーの影響ですね。
テテも、そのような環境で育ったのでしょう。テテが育ったエリアは割と裕福な方なので、あまりないとは思いますが、400戦の中にはもしかしたら路上なども含まれているかもしれません。
2.ゾラニ・テテのプロ戦績とファイトスタイル
2018年6月現在、テテの戦績は30戦27勝3負け、内21勝がノックアウトの成績を残しています。身長は175cm、リーチは182cm。
現在バンダムの王座についている各団体の王座は全て全戦全勝なのですが、テテのみ負けがついています。しかし「なんだ、じゃああんま強くないんだ」とするのは早計です。
負けはフライとスーパーフライ級時代での話。この体格でフライ、スーパーフライで戦うには少し無理があります。
しかもここ6年間は負けなし。
彼はスーパーフライでも王座になっている、2階級制覇王者です。スーパーフライの王座を獲得したのは、2014年の対帝里木下戦。格の違いを見せつけました。ほぼ右ジャブだけで相手をコントロール。フルマークに近い判定勝ちを収めています。
バンダムに移ったのは、現在のフランク・ウォーレン率いるクィーンズ・ベリー・プロモーションズと契約を交わしてから。
2017年4月にアーサー・ヴィラヌエヴァとWBOバンダムの暫定王座決定戦を行い、こちらも3者フルマークに近い判定勝利。WBOバンダムの暫定王者となります。
そして、当時正規王者だったマーロン・タパレスがタイトルマッチで体重超過の失策を犯し、王座をはく奪されたことに伴い、テテが正規王者として君臨するようになり、現在に至ります。
ちなみにその時のタパレスの相手は日本の大森選手でした。
そして、そのヴィラヌエヴァの次の試合、同じ南アフリカ共和国の対シボニソ・ゴニャ戦で、テテは世界的に有名になります。
なんと11秒ノックアウト。
スーパーフェザーのダニエル・ヒメネスが持っていた17秒という記録を上回る最短記録です。
珍しく見せた右フック一閃。相手は立てませんでしたね。
直近の相手はオマール・ナルバエス。
この戦いがテテらしいので、少し詳しく見ていきたいと思います。しかもナルバエスは井上とも対戦経験があるので、多少は比較の参考になるでしょう。
まずは序盤。序盤だけには限らないですが、印象的だったのがテテの威圧感。身長差もあったかもしれませんが、常にどこか狙われているようなあの感覚は対峙したボクサーだとかなり感じるはずです。
「不気味」という言葉が一番ふさわしいと思います。相手が少しでも隙を見せれば、そこを確実に刺しにいくといった雰囲気を持っています。
1ラウンドから3ラウンドあたりはほぼ右ジャブ。いいタイミングで打ちます。相手が入ってこようとしたところに絶妙のタイミングでジャブを打っていました。
痛めつけたり、顔を上げさせるジャブというよりも、相手の前進を止めるジャブが非常にうまいです。ナルバエスもテテと同じサウスポーですが、体が真正面を向いてしまっている時間が長かったので、余計にジャブが効果的でした。42歳なので、試合してるだけでも凄いと思いますが、序盤で結果が分かってしまう感じの立ち上がりでしたね。
中盤から終盤にかけても、基本的にはテテの右ジャブが先行するというスタイルは変わりません。基本ナルバエスはガードを重要視する選手なので(だからこそ42歳まで出来ています)、攻撃しようと思ったらジャブを被弾の繰り返しで、テテに危ないシーンは一切ありませんでした。
普通、前の試合で11秒KOをしているので、「よし今回も!」と張り切りそうなものですが、本当に淡々と自分の仕事をこなすのみ。そういうところもリゴンドーに似ています。
もちろんテテは右ジャブだけではありません。特筆すべきは、ワンツーからの右ボディ、そして左のアッパー。
ワンツーからの右ボディは、単純に速いです。左ストレートから右ボディのつなぎが、本当に綺麗、教科書のようです。しかも手が長いので、遠い距離から打てます。
もう一つは、左のアッパー。これは殺傷能力があります。
普通アッパーは接近戦で使われるものなのですが、テテはリーチの長さがあるので、通常のボクサーよりも遠い距離から撃てるのがアドバンテージですね。もちろんリーチの長さだけではなく、練習のたまものです。
このアッパーが、ずばり決まったのはスーパーフライ級の防衛戦ポール・バトラー戦ですね。
上述のナルバエス戦でも所々に見せています。
バンダムでリーチ182cmは驚異的、その特性を十分に生かしたスタイルといえます。ナルバエス戦だけの解説を読むと、テテはアウトボクサーのように思えますが、常に相手を追っていくスタイル。
ごりごりのインファイトをするタイプではありませんが、KO率71%が示す通り、プレッシャーで相手を削り、ジャブで出鼻をくじき、相手が袋小路になってところを仕留めるタイプのようです。
ライアン・バーネットのパンチを斧と表現するなら、テテのパンチは鞭ですね。手数の多い右ジャブで相手にフラストレーションをためさせ、しなるような右ボディ、左アッパーでとどめを刺す。
11秒KOでパワーファイターと思われてしまうかもしれませんが、あれはテテの戦闘力を図る参考にはならないでしょう。
それでは、このテテが井上と戦ったらどうなるか、見ていきたいと思います。
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3.井上尚弥ともし戦わば
テテは既にWBSSに参戦を正式に表明し、WBSS公式HPにもアナウンスされています。
ですので、テテvs井上の実現はそう難しくないでしょう。だからこそ、冒頭のやり取りが繰り広げられたわけです。
この2試合を予想するなら、井上のKO勝ち、もしくはテテの判定勝ちのどちらかだと思います。まずは、テテが判定勝ちするパターンを見ていきましょう。
日本人としてはあまり考えたくないですが、テテが勝つ理由を挙げていきたいと思います。まず、テテは井上がこれまで戦ってきた相手のどのタイプとも違うということ。
サウスポーで手足が長いタイプは、ライトフライ、スーパーフライにはなかなかいません。このテテが初めてです。そして、概して日本人はこういうタイプに弱い。失礼ながら、帝里木下は井上と実力が違うのであまり参考にはなりませんが、バネのあるサウスポーというのは内山対ジェスレル・コラレスをどうしても思い出してしまいます。
少しタイプは違いますが、山中の最後の相手、ルイス・ネリも特徴のあるサウスポーでした。
井上が右ジャブで出鼻をくじかれ、出るに出られない展開が続くとは考えにくいですが、テテが勝つとしたらその戦法ですね。所謂「TeteTime」にはまると危険です。
テテはマクドネルと体格・リーチともにほぼ同じですが、サウスポーであることと減量の影響がそこまでないであろう事を考えるならマクドネルよりも間違いなく強敵です。
懐の深さだけではなく、上述のワンツー・右ボディ、左アッパーは井上でも驚異でしょう。
あの角度と距離から打ってくる選手は、スパーリングパートナーでもなかなかいないはずです。
井上がナルバエスを序盤で衝撃KOし、テテはナルバエスに判定勝利、なので井上有利とするのは少し単純すぎる見方です。
お互いスタイルが違うので、相手の潰し方にもスタイルがあります。井上は圧倒的パワー、テテは相手を封じ込める術、プレッシャーを、共に存分に発揮した形になります。
では、続いて井上が勝つパターンに関して。これはマクドネル同様テテが沈められるKO勝利です。マクドネル戦で一番凄いと思ったのが、マクドネルとの体格差をものともせず、左側に踏み込んでの左ボディ。
よほどのスピード、そして度胸がないと出来ないプレイです。テテの場合、右手が邪魔ですが左ボディを狙う腹は近くなるので、これが決まればテテの細い身体が悶絶するはず。
何より、テテは井上程のパワーヒッターとの対戦は、アマ・プロ通じて絶対にないはずです。マクドネル戦では、左フック以外クリーン・ヒットというものは見られませんでした。
それでもKO勝利。ガードの上、かすっても衝撃が強そうなパンチです。テテの細い身体だと耐えられません。
井上のKO勝利と、テテの判定勝ちの勝率を比べるのであれば、井上KO勝利が断然高いでしょう。
バンダムに上がった井上の突進力を、テテの右で止められるとはとても思えないです。
まとめ
個人的に、現時点で井上を苦しめられるとしたらゾラニ・テテだと思います。テテも同じですが、井上にとっては今まで戦った事がないタイプ。
サウスポーでしかも長身・長リーチとなると、バンダム級王者達の中では攻略が一番やっかいでしょう。だからこそリングマガジンは、現時点でのバンダム級最強をゾラニ・テテに設定しています。
井上との対戦で、テテがいきなり戦法を変えてくることはないでしょう。やはり基本の右ジャブから鋭いコンビネーションか左アッパー。
これが注意点です。
WBSS初戦であたることはないと思いますが、激突した場合は両者の体格差、それを井上がどう攻略していくのかが見ものです!
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