キックボクサーのトップと、総合のトップの試合が組まれるのは、決して珍しい事ではありません。
過去遡れば、一番多くの方の印象に残っているのは魔裟斗対山本KIDでしょう。
ジャダンバ・ナラントンガラグを右ストレートでダウンさせてからのパウンドで仕留めたのち、リング上で実況席にいた魔裟斗に宣戦布告。
後々語り継がれる、ビッグマッチを実現させました。
そして2018年9月30日、近年まれに見るキックボクシング界の最強と総合格闘技界の最強が相まみえます。
しかもどちらも日本人。
那須川天心対堀口恭司。この2人の試合を徹底予想したいと思います。
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キックボクサー那須川天心 対 総合格闘家 堀口恭司 概要
9月30日、この2人の対戦はさいたまスーパーアリーナで行われます。
イベントは「RIZIN.13」、58kgのキックボクシングルール、3分3ラウンドでの激突となりました。
丁度魔裟斗対KIDによく似ています。
マリンメッセ福岡で行われたRIZIN.10において、イアン・マッコールを開始9秒左ショートフックで沈め、リング上で「那須川君やろうよ」と堀口。
予定されていたRIZINのキックボクシングトーナメントに堀口も出る、という形での宣戦布告でしたが、互いの了承の元、万全の状態で戦えるワンマッチでのバトルが決定しました。
記者会見が8月24日に行われ、基本のルールは上述のキックボクシングルール。
ただ、今後細かいルールの変更はあるようで、もしかしたらオープンフィンガーでキックルールという事もあるかもしれません。
現状では、今の3分3ラウンドキックルール、グローブは通常のキック用グローブという事で予想を展開していこうと思います。
まずはお互いの、これまでのキャリアハイライトから。
キックボクサー那須川天心
キックボクシング界に限って言えば、日本の頂点に立つのは那須川天心か、武尊かといったところでしょう。
この2人の試合は幾度となく、現在もネット上で話題になりますが、K-1、Krush運営側(武尊側)とRISE、KNOCK OUT運営側(那須川側)が絶縁状態にあり、互いの選手の名前すら口に出せないような状態です。
対武尊は別として、那須川が戦ってきた相手はキックはもちろん、ボクシング王者、ムエタイ王者、そして総合格闘家と多岐にわたります。
井岡一翔やゾウ・シミンを老獪なテクニックで下したアムナット・ルエンロエンに対しては、なんと左右のボディブローでKO勝ち。
そこに行くまでの過程で三日月蹴りなども入っていたようですが、元ボクシングIBF王者をパンチで下すのは相当なボクシングテクです。
元王者の西岡利晃、山中慎介、三浦隆司、トレーナーの葛西紀明、東日本ボクシング協会の大橋会長も、那須川のボクシングテクには舌を巻いています。
現に、多くのボクシングジムからスカウトがあり、特に帝拳からのアプローチは熱心だったとの事。
それでも那須川は、格闘技を始めた当初の目標だった、キックで世界を取るという道から外れませんでした。
堀口の土俵である総合ルールでも、RIZINの舞台で4戦4勝。
衝撃だったのは、総合デビューの対ニキータ・サプン戦。
8割方入りかけた腕十字でしたが、体を反転させ回避。
普通はそこからスタンドで戦うのがキックボクサーのセオリーですが、天心はそのままパウンド。
さらに腕を取られる危険性や、三角をされるという恐怖感も腕十字で刻み込まれたはず。
それなのに、MMAのパウンドで締める!かっこいいですね。
しかも、その2日後のカウイカ・オリージョ戦にも中1日で参戦。
しかもその戦いではニンジャ・チョークで一本勝ち。
天心本人は、
「キックボクサーでも総合で勝てるという事を証明しました」
と言っていますが、那須川でなければ出来ない芸当です。
この試合で証明されたのは、那須川の順応性の高さ。
MMAの腕十字回避は、元々教えられていたとは思いますが、実際リング上でやられると中々出来るものではありません。
しかも、キックボクサーにとって命の腕。
決まりかけた時点でタップしてもおかしくないはずです。
那須川は、スパーリングを殆ど行わず、普段から頭の中で対戦をイメージするとの事。
本当にリアル刃牙ですね。
腕十字回避もイメージと練習はしていたのでしょうが、あの場面で出せる凄さ、練習でやったことを100%リングで出せる順応性が素晴らしいと思います。
そして今回のキック・ルール。
那須川はムエタイチャンプと2度戦い2勝。
スアキム・シットソートテーウとロッタン・ジットムアンノン。
やはり両者ともに本物です。
スアキム戦まで7戦連続KO勝利をおさめていた那須川ですが、タイ人2人に関しては共に判定でした。
かなりの強敵です。まずスアキムの方は、元々スーパーバンダム級選手でしたが、国内に敵がいないため、スーパーフェザー級で戦い、且つKO勝ちを収めています。
対ムエタイ相手だと、那須川選手のボクシングテクが光りますね。左ストレートとボディパンチが有効に効いていたと思います。
次戦のロッタン戦、こちらは那須川選手の最新試合になりますが、キャリア史上最も苦しんだ1戦でしょうし、ホームタウンの日本でなければ完全に判定負けだったと思える1戦です。
那須川が初めて試合中に恐怖を感じたこの1戦は、那須川の経験値を格段に上げた事でしょう。
さすが本場ムエタイの王者、そしてそれに互角に向かい合う那須川。
この那須川に、日本総合格闘技のトップはどう立ち向かうか?
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MMAファイター堀口恭司
那須川対堀口の対戦は、どちらかと言えば堀口側からのアプローチが強かったように思えます。
総合の戦績は27戦25勝2負け。
負けは2011年に修斗トーナメントでの対上田将勝戦と、UFCフライ級タイトルマッチでのデメトリアス・ジョンソン戦のみ。
伝統派空手をベースとしていることから、そのファイトスタイルはストライカー。
スタンスを広く取り、強烈なステップインの速さで、空手の追い突きのようなパンチを出します。
修斗アマチュアオープントーナメントを制し、2009年にプロ修斗転向。2010年には新人王を獲得し、2013年UFCに参戦します。
五味も秋山も山本KIDも苦しんだUFCの壁。
堀口はなんと8戦7勝1敗。
1敗はMMAのPFPがあればトップランカーと言われるデメトリアス・ジョンソンのみです。
UFCに参戦中の2016年、所属ジムを山本KIDのKRAZY BEEからアメリカの名門アメリカン・トップチームに移します。日本人では唯一です。
2017年には、UFCとの契約を更新せず、RIZINへの参戦を表明し、今に至ります。
RIZINに出てからは、そのストライカー振りを存分に発揮しています。
長い距離を一気にステップインし、相手を鎮めるという堀口のお得意が光ったのが、対所英男戦。
一気に近づき右フック一閃。そしてパウンドで勝利しました。
そしてRIZIN.10ではイアン・マッコールと対戦し、なんと1ラウンド9秒勝ち。
しかも相手の左ストレートを右にかわしてからの左ショートフック。
芸術的なカウンターです。
この試合の後、リングサイドにいた那須川に対して対戦希望を表明、この2人の試合が実現することとなります。
キックボクサー那須川天心 対 総合格闘家 堀口恭司 考察
直近で、最も話題を呼んだ総合格闘家の立ち技参戦は、コナー・マクレガーのボクシング参戦でしょう。
相手はThe Boxingのメイウェザー。
この試合を見て、総合格闘家がボクシングなり、キックボクシングに参戦すると、やはり不格好だなと思いました。
なぜかといえば、重心の位置。
マクレガーは普段、他の選手よりも重心を低い所に落として戦い、そこから溜めたエネルギーを放出させるように地面を蹴って相手に向かっていきます。
加えて、タックルへの対策という意味も強いです。
しかし、立ち技となると、重心の位置はそれよりも上。
故に、棒立ちのようになってしまい、普段のパンチの威力が出せていないなという印象をマクレガーから受けました。
普段とは違った目線で戦うというのは、結構しんどいですし、なにより疲れます。
相手からの攻撃の角度も違うでしょう。
しかもグローブはオープンフィンガーよりも重い通常のグローブ。
ハンドスピードも若干ではありますが、落ちるであろうことは否めません。
那須川は直近で、スアキム・シットソートテーウとロッタン・ジットムアンノンという、立ち技最強と言っても本当に過言ではない2人と戦い、勝利をしています。
対して堀口は立ち技の経験はありません。
堀口に、このタイ人2人を当てた場合、果たして勝てるのかというと、100%とは言いませんが、勝てないでしょう。
堀口独特のリズムと、ステップインで、もしかしたらフラッシュ・ダウンを奪えるかもしれませんが、パウンドがないためそこからの追撃は前蹴りで封じ込められるでしょう。
これが出来たのが、対魔裟斗戦の時の山本KIDです。
ステップインからの左ストレートで魔裟斗からダウンを奪いました。
しかし、これは試合後魔裟斗も言っていましたが、フラッシュダウン。
スピードにびっくりしてしまった結果のダウンだったそうです。
では、堀口が那須川にそれが出来るかと言うと、かなりの難易度。
那須川の左に、マッコールの時のように左を合わせられるかといえば、ディフェンスに重きを置く那須川に対してそれは難しい。
さらに、那須川も結構トリッキー型のファイターで、いうなれば変幻自在。
総合ルールであれば、タックル等加味し堀口に票を入れますが、キックルールであれば那須川の断然有利でしょう。
この試合、那須川のKO勝ち、那須川判定勝ち、堀口KO勝ち、堀口判定勝ちの順に確率が高いと予想します。
会場は、RIZINの舞台なので、7割型堀口ファンだと思います。
丁度、青木真也対長島自演乙雄一郎のときのように。
反則すれすれの青木のパフォーマンスでしたが、観衆はそれを煽るように青木に声援を送っていましたね。
那須川がその空気に飲まれるかといえば、それも否。
彼ほどのファイターであれば、環境は関係ないでしょう。
まとめ
以上、那須川対堀口の試合予想をさせて頂きました。
この試合前の空気感は、どことなく魔裟斗対KIDに似ています。
上述の通り、那須川有利と書きましたが、何かしでかしてくれそうなのがMMAファイター。
キックでの経験、重心などなど様々堀口には不利な面がありますが、是非ファンの心が熱くなるファイトをしてもらいたいものです。
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